おっちょこちょいな日常をおくる、うるるの雑記ブログ。

『ニュー・ブレイン ~僕の中に春をいっぱい感じる~』

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東宝のホームページやプレイガイド、各メディアでのキャッチコピーは「石丸幹二がミュージカルに本格復帰!」。作品の内容には一切ふれずにこのコピーつけちゃうってすごいなぁ!と思いつつ、でも、それだけ「ミュージカルを演じる石丸幹二」への注目度が高いんだなぁということをひしひしと感じた「ニュー・ブレイン ~僕の中に春をいっぱい感じる~」。これで本当に幹二さんが完全に復帰を果たしたんだという特別な気持ちで初日を迎え、千穐楽を見守りました。幹二さんが運命を感じた作品は、私の中でも宝物のように大切にしたい素晴らしい舞台でした。

「イノック・アーデン」で訪れたTOKYO FMホールも初めてでしたが、実はシアター・クリエも私にとっては初めての劇場。初めて訪れた劇場で幹二さんのミュージカル復帰作を観ただなんて、今後クリエは嬉しい思い出の場所として心に残りそう。上演時間は休憩ナシの105分。セットは大小のサークルカーテン(透け透けで中が見える生地です)が天井中央から吊られ、それよりも小さな照明の輪だけというシンプルなセット。劇中で使われる小道具は役者さんが運び、サークルカーテンも役者さんが自分で回して動きをつけるなど、いわゆるセットチェンジはないんだけど、サッとカーテンが回った瞬間にちゃんと場面が転換したり、2つの異なる空間を同時に見せたり、ナイスなアイディアだな~と感心。そしてそれだけシンプルな空間なので、照明の美しさが際立ってて。白いカーテンと幻想的な照明のコラボはため息がでるほど綺麗でした。

 

幹二さんが演じる主人公は、NYに住む売れない音楽家ゴードン・シュイン。彼は子供番組のキャラクター、カエルのバンジーの歌を書いて生活費を稼ぐ日々を送っています。冒頭、 軽いフットワークで現れたゴードンは、カジュアルなパーカーに白いスニーカーといったいでたち。めちゃめちゃ若~いっ!幹二さんのこと知らない人に「あの人33歳だよ」って言っても絶対信じてもらえる気がするぞ。そんなゴードンがピアノを弾きながら歌い出すフレーズは♪ケロ~ケロ~。ミュージカル復帰作の記念すべき第一声が「ケロ~ケロ~」だなんて!ちくしょー可愛いじゃないか!(笑)「わぁ、ホントに今までの石丸幹二の殻を壊すキャラなんだ!」と期待がふくらむ始まりでした。

友人で仕事のパートナーでもあるローダとレストランで食事をしていたゴードンは突然頭に異常を覚え、料理のお皿にバーンと突っ伏してしまいます。
この時の頭と指先の震えがすごくてちょっと怖くなるほど。そのまま救命救急隊に運ばれ、カーテンの中で処置をされてるゴードンくんはカーテンの中からすーっと外に出来てきて(幽体離脱ってことかな?)不安を思わせるメロディを歌い始めます…と、思いきやメロディがどんどん明るく希望めいてゆき、人が増えてきて皆で高らかに『ハート&ミュージック』の熱唱がはじまって。ここ、何度観ても最高の場面!某巨大掲示板ならキターーーッ!!のオンパレードに間違いないはず(笑)ああ実力派のキャストが揃うと、こんなにも迫力あるんだ!って鳥肌がたって、心臓がドキドキ高鳴る瞬間でした。最後の決めポーズでニッコニコなゴードンくんが超可愛いっ。

ここまでのくだりがすごい早かったので、脳の手術もさっさと済ませるのか思いきや、手術までに時間がかかったのはちょっと意外でした。脳の検査を通してゴードンがこれまで生きてきた軌跡がつまびらかに明らかになっていきます。とてもめまぐるしくテンポよく。妄想のようで現実だったり。現実のようで妄想だったり。 明るく優しいママが駆けつけた瞬間の「マーマぁ!」って甘ったれな言い方や、Mr.バンジーが出てきて(ママの目には見えない)イタズラをするところでは「いちいち出てきてくれなくっていいんだけど!」って、キミは女子高生か!みたいな言い方とか、とにかくゴードンの破壊的なキュートさにメロメロ。極めつけは、ゴードンの夢の中にロジャーが現れて『セイリング』を歌うシーン。なんじゃその顔は~ってつっこみたくなるくらい表情がロジャーLove(はぁと)なゴードンくん。そっかぁ、大好きな男子に対してはこういう顔をするといいわけですね。勉強になるなぁ…メモメモっと(違)

2人は夢の中で大海原をヨットでスイスイと走るのですが、ここは「タイタニック」を軽くパクったシーンなんだけど男2人というリアル感と、波をナース2人がお遊戯みたいに布をひらひらさせてて、ちょっとクスクス笑っちゃうところでもありました。そして、とにかく『セイリング』シーンは畠中洋さんの歌の上手さが秀逸!のびやかで心にすーっと染みてゆきます。畠中さんってものすごく歌がお上手なのに、押し付けがましくないところが素敵。そりゃあ、あんな素敵なロジャーの歌声を聞いた日にゃ、ゴードンくんもHAPPYになるさ~って感じの幸せそうな寝顔がまた超可愛くて萌え萌えだった(何度、”超可愛い”を書いてるのかなぁ)

そんなにロジャーLOVE(はぁと)だったゴードンくんなのに、実際にロジャーが花束持って病室に訪ねてくると急に拗ねちゃったりするんですよね。布団に隠れて、目を合わさないようにして「君の可愛がってる子犬が死に掛けているようなもんさ」なんて様子をうかがってみたりして。ほんっと子供~!かっわいぃ~!(爆)ロジャーはそんなゴードンの性格がすっかりわかってて、余裕たっぷり。大人の微笑みを浮かべてたりして。スネ夫くんぶりを炸裂させてたゴードンくんは、結局、ロジャーに「うしゃしゃしゃしゃしゃ」と撫で回されて(ムツゴロウさん!!)いつもの甘えっ子くんモードに。2人がまっすぐお互いを愛し愛されてて、ああ何か観てるだけで幸せな気分になるなぁって、ロジャーと一緒のラブなシーンはすんごくツボでした。

 

面白い発見もありました。ゴードンの本をママが全部捨てちゃって、それを拾ったリサが路上で本を売ってるくだりで、リサが「全部で108冊あるよ」と歌います。日本で「108」といえば誰もがピンとくるのは煩悩の数。108の煩悩を捨てて新しい年を迎えるように、108冊の本を捨てて新しい自分に生まれ変わる。なんだか、ブロードウェイ作品なのに日本的な解釈ができて、そこが面白いなぁ~って思ってたんですが、つい最近オリジナルキャスト版のCDが「ONEHUNDRED AND THREE BOOKS」って言ってるのに気づいて。「あれー?もしかしてうるが勝手に108冊って思い込んでたのか?」って、しっかり確認してみたところ、やっぱり108冊。翻訳の方が意図的にそうしたのならグッジョブだなぁ。ほかにも、ちょっとした言葉遊びがすごく効いてて耳で聞いてても楽しかったり。

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そして、何といってもこの作品でしっかりと心に刻まれた『春の唄』。
すべての感動が一気に集約されていくこの歌を歌うゴードンは、優しくて温かくて、すべてを包みこむ。彼を見守る人々のまなざしもまた慈愛に満ちて、深く温かい。本当にこの歌の持つ力に私はノックアウトでした。いつか人生のなかで立ち止まってしまうことがあって、けどまた歩き始める時、ふと思い出す歌はきっとこの歌なのだと思う。

 

負けたはずのゲームに勝ったり、許せるはずのない人を許せたり、惨めな想いが愛に変わったり。いつでも、今からでも人生は逆転できるのだということを教えて励ましてくれるバンジー。主人公は物語の最後にちゃんと「気づいた」んですよね。傍目には何ら変わってないように見えても、気づくと気づかないでは、180度、天と地ほどのチェンジなのです。それは沈みゆく夕陽に感動したり、道端に咲いてる花を美しいと思ったり、近所の犬が可愛いと思ったことと同じ。いまの幹二さんだからこそ、演じられる役なんだなぁ、と痛感しました。

マルシアさんじゃないけど、朝、目が覚めることのキセキ。歯を磨きながら頭の中をお気に入りの歌が流れて、友達とバカな話をしたり、大好きな人とハグしたり、胸をときめかせたり。 ありふれた出来事がキセキの積み重ねであるということ、この作品を通して、自分はたくさんの奇跡に囲まれて生きている、と改めて気づかされました。そして身近な奇跡に気づく事こそ、大きな「チェンジ」なのだと思わされました。普段何気なく生活していると当たり前のように忘れてしまう家族の愛、友情、恋人の愛、自分に関わってくれる周囲の支え…。それらは、すべて奇跡のかたまり。すべてがないまま一人ぽっちで生きていくことはできない。そして生きていなければ、それらに気づくことはできない。これから私も私の周囲にいてくれるすべての人へ感謝の気持ちを忘れずに生きていけたらなぁ、と思いました。

「イノック」の時にも「おかえり!」って思ったけど、やっぱり歌ってる幹二さんは本当に輝いてて、舞台に立ってることが幸せで幸せで仕方ないって感じのキラキラの笑顔を見てるだけで、こっちまで幸せのおすそわけをいただいたような幸福感で胸がいっぱいでした。 この時代に生まれて、日本に生まれて、チケットを買えるくらいの適当なお金があって(笑)幹二さんのことを応援できるのもまたキセキのひとつだと思う。すべてのことに心の底からありがとう!!そんな優しい気持ちにさせてくれるミュージカルでした。

ミュージカル『ニュー・ブレイン』~僕の中に春をいっぱい感じる~
2009年3月11日(水)~4月29日(水)
シアタークリエ

[スタッフ]音楽・作詞・脚本:ウィリアム・フィン/脚本:ジェイムズ・ラパイン/演出:ダニエル・ゴールドスタイン

[キャスト] 石丸幹二/マルシア/畠中洋/樹里咲穂/初風諄/パパイヤ鈴木/赤坂泰彦・本間ひとし(Wキャスト)/友石竜也/田村雄一/中村桃花

(※2010年8月追記)
この作品が上演されている時、私の親しい友人が脳溢血で倒れ、予断を許さない状況でした。私はゴードンのように必ず再生してくれるはず!と思い、毎日祈っていましたが、彼女は6月静かに天国へ旅だっていきました。「ニュー・ブレイン」は大好きな大好きな作品で、そして同時にそのとき神様に祈り続けていた自分の心境を想い出して、少し心がチクリと痛む作品でもあります。でもこのミュージカルが、「春の唄」が、いまも私の心を癒してくれるのです。

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うるる

映画とミュージカルが大好きな、うるるのブログです。ご贔屓の俳優さんは、上質を知るミュージカル界の貴公子こと石丸幹二さん。私もコーヒーが大好きなのですが、1年に3回くらい派手にぶちまけて周囲から哀しい目をされます。自他ともに認めるおっちょこです。アイコンはふわふわ。りさんのイラストです。

マルmemo.